いつまでも続けばいいと、願って @


いつまでも、続けばいいと思っていた。

そんな事あるわけないけれども。

それでも。






「卒業おめでとう」
そう言って渡された、最後の通知表。
両手で受け取って、しっかりと胸に抱いて席に戻り、ゆっくりと捲る。
そこには青い、達筆な文字で、『おめでとう』と書いてあって。
涙が出そうになった。

HRが終わった後の教室は、撮影会になっていた。
先生との。思い出の写真を撮る為に。皆必死。

「雛森」

呼ばれて、机の中のものを鞄に仕舞っていた手を止めた。
「大学から色々届いてるから、後で職員室な」
私は頷く事しかしなかった。

職員室までの道すがら、鞄を手に、いつも以上のスローペースで歩いていたら、突然腕を引かれた。
連れ込まれたのは化学室。腕を引いたのは先程まで記念撮影をせがまれていた担任だった。そのまま、閉められたドアに押し付けられて、持っていた鞄が落ちた。
先生の顔が近付いてきて、息が私の耳にかかる。腕が私の背中に回されて、彼は嬉しそうに言った。
「最後に、やっていくか?」
下着のホックが外されるのが判った。
密着した身体を少しでも離そうと、手を彼の胸に当てて押してみた。それでも彼は離れるわけもなく。
「いやか?」
なんて、当たり前のように聞いてくる。それで私が嫌だと言ったらやめてくれた事があっただろうか。私の記憶にはない。
だけど、最後なのだからと、彼にささやかな抵抗を。
「ここじゃ嫌です」
なんて。
そう言えば、私がさっき落とした鞄を拾い上げて、腕を掴んで歩き出した。

部屋の奥にある、準備室へと。

それは薬品の臭いの充満した部屋で、授業中になんか使わなかった、よく判らない器具なんかも置いてある。
私がこの授業で覚えた事は、元素記号1から20までと、化学反応式だけだった。
大学は文系だから、きっとこれからお世話になる事なんてないと思う。ただ授業中は楽しくて楽しくて、楽しかった事しか記憶にない。
彼は私の鞄を小さな備え付けの机の上に置いて、そこに私も置かれた。
机の高さで見下ろす形になった私は、彼の両肩を軽く掴んで、名前を呼んだ。
「日番谷先生」
見上げてくる彼は、歳より幼く見える、のはきっと気のせいで。何かを企んでいるような目をして、私を見てた。

彼の細くて長い指は、私の首元で止まり、普段は付けていなかった制服のリボンを外した。それは音もなく床に落ちていった。
私の気持ちも、こんなに簡単に、あっさりと、落ちていってしまうものなのだろうか、そんな事を考えた。
そんな事を考えている間に、私のブラウスのボタンは次々と外れていく。
「桃」
こんな時に名前で呼ぶなんて反則じゃないか。
「何考えてんだ」
先程外された下着のせいで、ボタンを外しただけで目の前に現れた胸は、前よりは大きくなった、と思う。
「貴方の事です」
そう言って、私は彼の、緩めに縛られたネクタイを外した。





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